聖書物語 バベルの塔

約物

バベルの塔

○ノアの家族は年と共に増え栄えて、地には再住民が充ちて来たが、被洪水の前と後とは住民の有〓

が大に違ふ、洪水の前は、チグリス、ユフラテの二の川の間に、人民が皆一緒に集つて住んでゐたが

果の方の山を越え、西の方の破漢を過ぎては人影が殆んどない、その他の〓い世界には誰一人住んで

ゐなかつた、夫が洪水の後では大いに変つて、一家々々が彼方へ移り、此方へ分れたりして、方々上

住所を求めるに至つた、かくして広い土地を成る丈多くの人々に用はせやうとする神の計画であみ

さて、その民が方々に散るやうになつたのは、斯ういふ順序である、方舟が止つたアララテ出から

南へ下つて、チグリス、ユフラテの二の川の間、シナルの地に来たノアの〓は、一家が漸次に栄え下

来たので、一の市を作つて是を国の首都として、民を四方へ散乱すまいと金てた、其時に土をよく焼

固めた瓦を発明したので、是を用へば丈夫な建物をすることが出来る、『さらば高き塔を作上け、地か

ら天に声えさせやう、此塔を目標としたら私等は散乱で一所に集つて居られやう』と考べて、人々い

乙を〓り、〓潔で〓めて、一医藩と塔を積んだ、併し静は人が洪水の静の棒に一所に集つて諸方入

設らぬのを喜ばない、人が一所に集れば悪人が出来て夫が他の人をも悪の方に引込んで、又洪水前

の様な汚れた世になるのを恐れたので、今、世を治めるための市と塔とを建てやうと働いてるる人々

の語を混雑させた、今迄は人は皆同じ語を用つてゐたから、互に不便なしに話してゐたのを、神が漸

〓に「人々々の語を変へて来たので、やがて同じ一家の者の語は解るが、他の一家の語は少しも輝ら

ない標になつて了つた、互に談話をするに不便桜まるので、藩やくに人々は互に語の解る同士集つて

他の土地へ移つて行つた、斯うして塔は遂に完成らずに止んだ、塔は長く半成の儘で立つてかる。

〓市は夫からバベル(混乱)と呼ばれたが、今はパピロンと云つてゐる、バベルから人々が八方へ散

"たが、其中に北へ往つたのはアツスリヤの都ニネべを建て、西に往つたのはニル河の辺に国を建て

〓ヂブトと云つた、北西へ彷徨つたのは地中海と云はれる大海の浜まで出て、シドン、チルの市を作

り、身は船夫になつて、諸方の国々へ渡つて商買をした、斯くして地に数多の国が出来、多数の民が

住んで、種々の書語で談話をするに至つた。